第52章 ワダツミの子<肆>
「正直なところ私は驚いています。普通ならばあれほど骨を砕かれていれば、刀を握るところかまともに動かすことも難しいはず。しかし、これほど短期間でここまで動かせるようになっている。あなたの自然治癒力は常人を超えていると言っても過言ではありません」
「それって褒めてんの?けなしてんの?」
汐が疑いと嫌悪の眼でしのぶを見つめると、しのぶは困ったように首を振った。
「いいえ。ただ、あなたには他の人にはない力がありますから、私も少しばかり混乱しているのかもしれませんね」
そう言って目を伏せるしのぶの眼には、ほんのわずかだが怒りの気配を感じた。それを見た汐は、言葉を失う。
「さて、今日でギプスは外しましょう。そしてもう少ししたら、炭治郎君たちと同様機能回復訓練に入りますね」
その日はしのぶは一度も汐と目を合わせることはなかった。