第52章 ワダツミの子<肆>
「だってそれ不味すぎでしょ!?不味いにも程度ってものがあるでしょ!?」
「腕が元通りにならなくても知りませんからね!!」
「冷たい!その言い方冷たい!!」
「あなたは贅沢なんです!この薬を飲んで、お日様を沢山浴びれば後遺症は残らないって言っているんですよ!」
アオイの畳みかけるような説教に善逸は耐え切れず、伊之助の眠るベッドを踏みつけて汐に抱き着いた。
が、汐は善逸の頭を掴み炭治郎のベッドに押し付けた。
「どさくさに紛れて抱き着くな!」
「痛い痛い痛い!!頸が折れる頸が折れる!!」
「気持ちはわかるけど、怪我人を増やす真似はやめろ!」
炭治郎が慌てて汐を引きはがし、善逸は息も絶え絶えにずるりと座り込む。そんな彼らを見て、村田は視線を落としながら言った。
「楽しそうでいいなあ・・・」
彼から漂う陰鬱な匂いと音に、炭治郎と善逸の顔が青ざめる。村田は俯いたまま、この世の終わりを見てきたような声色で言った。
「その那田蜘蛛山の一軒での仔細報告で柱合会議に呼ばれたんだけど・・・地獄だった。怖すぎだよ柱・・・」
「あの連中と顔を合わせたわけね。それは気の毒に」
汐はそう言って憐みを含んだ眼で村田を見つめた。
「なんか最近の隊士は滅茶苦茶質が落ちてるってピリピリしてて皆。那田蜘蛛山行った時も命令に従わない奴とかいたからさ。その育手が誰かって言及されててさ・・・俺みたいな階級の者にそんなこと言ったってさあ・・・」
村田は俯いたまま永遠と愚痴をこぼし続け、流石の汐も突っ込む気が失せて村田を眺めていると。
不意に炭治郎と善逸が目を見開いた。(善逸は微かに頬を染めていた)