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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第52章 ワダツミの子<肆>


抜けるような青空が広がり、心地よい風が木々の枝を揺らして通り過ぎていく。

そんな穏やかな日和の中、産屋敷邸の前にたたずむ一人の男がいた。

彼の名は煉獄杏寿郎。鬼殺隊最高位の柱の一人、炎柱の称号を持つ男だ。

彼は屋敷に向かって一礼をすると、刀を差し直す。そして燃え盛る炎のような羽織をひるがえし、その場を後にしようとしたその時背後から声がかけられた。

「出陣ですか?」

煉獄が振り返ると、そこには蝶を彷彿とさせる羽織を纏った女性、胡蝶しのぶの姿があった。

「胡蝶か。鬼の新しい情報が入ってな。向かわせた隊士がやられたらしい。一般大衆の犠牲も出始めている。放ってはおけまい!」

煉獄の言葉にしのぶは僅かに表情を曇らせる。

「十二鬼月でしょうか」
「おそらくな。上弦かもしれん」
「難しい任務のようですが、煉獄さんが行かれるのであれば心配ありませんね」

しのぶは少し含みのある笑みを浮かべながら言った。そんな彼女に、煉獄は思い出したように言った。

「胡蝶。あの少年たちを預かってどうするつもりだ?継子の枠を増やすとか言っていたが、そういうわけでもあるまい?」
「別にとって食べたりはしませんから大丈夫ですよぅ」
「それはそうだろう!」

しのぶの言葉に煉獄は大声で笑いながらその場を後にする。そんな彼の背中にしのぶは小さく「お気をつけて」と言った。

敷地から出た後、煉獄は空を見上げた。抜けるような青空が広がっておりその青が彼の目に映る。

それを見て何故か頭に浮かんだのは、青髪を揺らしながら美しい歌を奏でる一人の少女。

(あの青髪の少女はどうしているだろう。胡蝶に聞きそびれてしまったな。あの美しい歌を、もう一度聴きたいものだ)

何故彼女のことを思い出しなのかわからないまま、煉獄は一人足を進めるのであった。
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