第51章 ワダツミの子<参>
炭治郎は汐の頭を優しくなでると、ベッドからそっと立ち上がる。が、不意に背中に熱を感じて炭治郎は動きを止めた。
「汐?」
汐は炭治郎の背中にしがみつく様にして額を押し当てながら、そっと口を開いた。
「生きててくれて、よかった」
そう告げる彼女の手が微かに震えていることに気づいた炭治郎は、そのままの姿勢で同じく口を開いた。
「俺の方こそ、汐が生きていてくれてよかった」
そう言って炭治郎はもう一度彼女を寝かせると今度こそ部屋を出ていった。汐は激しく脈打つ胸を抑えながら、熱がこもる頬を枕に押し付けていた。
一方、部屋から出た炭治郎も、早鐘のように打ち鳴らされる自分の心臓に戸惑っていた。
彼女が少しだけでも元気になれたのはよかったが、今度は自分の方が参りそうで困ったのだ。
その気持ちがなんであるのか、炭治郎には全く分からなかったが、とりあえず今は病室に戻ろう。
そう思って一歩踏み出した彼が、あの少女に見つかってどやされるのはもう少し後・・・