第51章 ワダツミの子<参>
だが、その匂いが何かを問おうとしたとき、汐が口を押えた。よく見ると彼女の顔色は悪く、汗もかいている。
炭治郎は慌てて汐をベッドに寝かせると、汗を拭き布団をかけた。
「ごめんな、お前も酷いけがをしていたのに無理させて」
「それはお互い様でしょ?あんたもこんなところにいないでさっさと病室に戻りなさいよ」
「そうだな。疲れていると悪いことばかり考えてしまうから。今はゆっくり休む。俺達がするべきことはそれで、そのあとのことはゆっくり考える」
炭治郎の言葉に汐は目を見開いた。
「覚えてるか?最終選別の帰りに、お前が俺に言ってくれたことだよ」
「そんな昔のこと、よく覚えてるわね」
「当り前だろ?その言葉で俺は本当に救われたんだ。大切な言葉を忘れるわけがないだろう」
大切な言葉、と言われて汐の目頭が熱くなる。だが、涙を見せるとまた炭治郎が心配するとふんだ汐は、布団にくるまり彼に背を向けた。
「ほら。あんたもさっさと戻りなさいよ。早くしないと、あの女の子にどやされるわよ?」
「そうだな。そうするよ。お休み、汐」