第50章 ワダツミの子<弐>(一部閲覧注意表現あり)
「うわぁぁ、炭治郎聞いてくれよーっ!くさい蜘蛛に刺されるし、毒ですごい痛かったんだよぉー!!さっきからあの女の子にガミガミ怒られるし、最悪だよーっ!」
そんな善逸を少女はぎろりとにらみ、彼は身体を震わせる。
そんな善逸の姿を見て、炭治郎は違和感を感じた。彼の手が異常に小さく見えたからだ。
「蜘蛛になりかけたからさ、俺今すっごく手足が短いの」
そう言って顔を上げた善逸は、鼻水を隠の服につけたままだった。
顔を青ざめて震える隠をしり目に、炭治郎は伊之助と村田の事を尋ねた。
「村田って人は知らんけど、伊之助なら隣にいるよ」
炭治郎が視線を向けると、善逸の隣に伊之助が横たわっていた。あまりにも静かすぎたため気づくことができなかったのだ。
炭治郎はすぐさま伊之助の下に駆け寄り、無事でよかったと伝えた。
あの時助けに行くことができず、危険な目に遭わせてしまった後悔と、無事でいた嬉しさが入り交じり、炭治郎の眼から涙があふれ出した。
「ごめんな、助けに行けなくて・・・」
泣きじゃくる炭治郎に、伊之助は間を置いた後「・・・イイヨ、気ニシナイデ・・・」と答えた。
伊之助から発せられた声は、普段の彼とは思えない程弱弱しく彼果てていた。
そのあまりの変わりように、炭治郎は本当に伊之助かと疑う始末だ。
「なんか喉潰れているらしいよ。詳しいこと よく分かんないけど、首をこう・・・ガッてやられたらしくて、そんで最後、自分で大声出したのが止めだったみたいで、喉がえらいことに」
「・・・なんで?」
「落ち込んでんのか、すごい丸くなってて、めちゃくちゃ面白いんだよな、ウィッヒヒッ」
善逸はそう言って何とも言えないような笑い声をあげ、そんな彼に炭治郎はなぜそんな気色の悪い笑い方をするのかを尋ねた。
善逸は固まり微妙な表情をするが、ある違和感を感じ声を上げた。