第50章 ワダツミの子<弐>(一部閲覧注意表現あり)
屋敷に入ると、案内してくれた少女は汐の容体があまりよくないことを見抜き、すぐさま別室に案内した。
途中で嘔吐したせいか、脱水症状が出ていたからだ。
汐と別れ、炭治郎が病室に入った瞬間。聞き覚えのある汚い高音が響いてきた。
「五回!?五回飲むの!?一日に!?三か月間飲み続けるのこの薬!?これ飲んだら飯食えないよ!すげえ苦いんだけど!辛いんだけどォー!!」
涙を流しながら看護師の少女を困らせているのは、見覚えのある黄色の髪の喧しい少年。我妻善逸だった。
「ていうか、薬飲むだけで俺の腕と足治るわけ?ほんと!?もっかい説明して誰かっ、一回でも飲み損ねたらどうなるの!?」
「静かにしてください~」
そんな彼を見て二つ結びの少女は呆れた顔をする。その後に続いた炭治郎は、善逸の姿を見て大きく目を見開いた。
「善逸・・・!!」
善逸が生きていたことに、炭治郎は心の底から安堵する。相も変わらずうるさく騒ぐ彼を、少女は一喝した。
「静かになさってください!!説明は何度もしましたでしょう!?いい加減にしないと縛りますからね!!」
怒鳴りつけられた善逸は目を剥き、涙目になりながらガタガタと震えている。
そんな彼を見て少女はため息をつくと、炭治郎のベッドを整えるべく奥へと足を進めた。
「善逸!!」
炭治郎が声をかけると、善逸は金切り声を上げて飛び上がる。
「大丈夫か!?怪我したのか!?山に入ってきてくれたんだな・・・!!」
炭治郎が善逸を最後に見たときは、山に入るのを躊躇して震えていた姿。
何故彼が山に入ったのはわからなかったが、それでも危険を冒してまで来てくれ、そして生きていることにうれしさを感じた。
「た。炭治郎・・・!!」
一方善逸も炭治郎の姿を見た瞬間、炭治郎、ではなく隠に抱き着き頭をうずめた。