第50章 ワダツミの子<弐>(一部閲覧注意表現あり)
「ごめんくださいませー」
隠達に連れてこられてやってきたのは、一軒の大きな屋敷だった。ここが、しのぶの屋敷なのだろうか。
しかし呼んでも返事は帰ってこず、屋敷の中はしんと静まり返っている。
「全然誰も出てこねえわ」
「庭の方を回ってみましょう。それに、あれをそのままにしても置けないもし」
禰豆子を背負った隠が、入り口に立ち尽くす汐を背負った隠を見ていった。彼はふんどし姿で泣きじゃくっている。
その背中では魂が抜けたような汐が、かろうじてぶら下がっているような状態だった。
「お前、自分で歩けよな」
「すみません。もうほんと、体中痛くて」
「年より臭いこと言わないでよ」
炭治郎は負ぶさられながらあたりを見回した。本部もかなりの大きさだったが、この屋敷もそれと負けていない程大きく見える。
すると、炭治郎の下に一匹の蝶が舞い降りてきた。赤と薄青い羽の綺麗な蝶だ。
蝶は炭治郎の周りを一周すると、どこかへ飛び去って行った。
(そういえば【蝶屋敷】って言ってたっけ)
そんなことをぼんやりと考えていると、隠達が突然足を止めた。視線を向けると、そこには蝶と戯れる一人の少女の姿があった。
「あれはえっと、そう。【継子】の方だ。お名前は確か・・・」
「ツグコ?ツグコってなんです・・・」
「栗花落(つゆり)カナヲ様だ」