第50章 ワダツミの子<弐>(一部閲覧注意表現あり)
耀哉がそういうと、しのぶが徐に右手を上げた。
「でしたら、竈門くん達は私の屋敷でお預かりいたしましょう」
「「・・・え?」」
彼女の言葉に一瞬間が空いた後、汐と炭治郎の声が重なった。
それからしのぶは二回手を鳴らして隠を呼ぶと、汐、炭治郎、禰豆子を連れて行くように促した。
禰豆子の下へ行った隠は、禰豆子と目が合った瞬間たじろいだが、禰豆子はきょとんとしたまま隠を見つめていた。
「「前失礼しまァす!!」」
切り裂くような声と共に二人の隠が耀哉と柱達に一礼すると、瞬時に汐と炭治郎を抱え走り出す。禰豆子の入った箱を背負った隠も、慌てて後を追った。
遠ざかっていく足音を聞きながら、耀哉はゆったりとほほ笑み「では、柱合会議を・・・」と紡いだその時だった。
「ちょっと待ってください!!」
皆が何事かと顔を向けると、炭治郎が柱にしがみつき抵抗しながら声を張り上げていた。
「その傷だらけの人に頭突きさせてもらいたいです、絶対に!!禰豆子を刺したぶんだけ、絶対に!!!!」
「黙れ、黙っとけ!!」
「汐は殴っちゃったけれど、頭突きなら隊律違反にはならないはず・・・」
「黙って!大人しくしなさい!!」
不死川に敵意を向ける炭治郎に、必死に炭治郎を引きはがそうとする隠達の不毛な争いが行われる中、汐はぐったりとしたまま隠に負ぶさられていた。
隠がとめるように促すも、彼女は死人のように動かない。
なおも騒がしくする炭治郎だが、突如どこからか石が飛んできて炭治郎の顔面を穿った。
その衝撃で炭治郎は地面に転がり落ち、柱達は今石を投げた犯人に顔を向けた。
「お館様のお話を遮ったら駄目だよ」
今まで特に反応を示さなかった時透が、石をもてあそびつつ炭治郎を睨んだ。
「申し訳ございません、お館様」「時透様」
隠達はすぐさま耀哉と柱達に土下座して謝罪する。
そんな時透に甘露寺は再び頬を染め、(無一郎君、やっぱり男の子ね、かっこいいわ)と心の中でつぶやいた。
「早く下がって」という時透の言葉に、隠達はぐったりした炭治郎を抱えて走り出した。(その時、何故か甘露寺までが下がった)
「炭治郎――」
炭治郎が連れていかれる寸前、耀哉の口が動いた。
――珠世さんによろしく