第49章 ワダツミの子<壱>
時間にしては僅か5分ほどだったが、皆には永遠ともいえる程長く感じた。
汐は祈るように手を組んだまま歌を終わらせる。そして目を開けあたりを見回した。
皆呆然としたまま汐を凝視し動かない。もしかして気に入らなかったのだろうかと青ざめたその時。
空気を一変させる拍手が鳴り響いた。
「素晴らしい歌声だったよ、ありがとう」
耀哉が目を細めながらおのれの両手を打ち鳴らしている。それに続く様に甘露寺が慌てて手を打ち鳴らし、他の一部の柱も手を打ち鳴らした。
湧き上がる拍手に、汐の顔が瞬時に真っ赤に染まり身をよじらせる。そんな彼女を見て炭治郎は微かに愛らしさを感じた。
「さて、汐の歌を聞いた感想だけれど、みんなはどう感じたかな?」
耀哉はあたりを見回し優しく問いかける。すると甘露寺が興奮したように手を上げた話し出した。
「あ、あの!なんだかぶわーって来ました!!ふわーっとしたあとぶわーってきて、体がカーッとなってその後ホワホワってなって・・・!とにかくすごかったです!!」
擬音を交えた幼い子供ような感想にみんなは何とも言えない表情になり、伊黒に至っては頭を抱える始末だった。
そんな彼女に耀哉は微笑みかけると、甘露寺の顔が真っ赤に染まった。
「それで、君はどうかな?実弥」
耀哉は後ろ隣りにいた不死川に声をかけると、彼は肩を震わせ返事をする。そして自分の腕を見て思わず目を見開いた。
(血が殆ど止まっていやがる。それに痛みもねえ。あいつの力だっていうのか・・・?)
そして禰豆子を見れば、あれほど傷つき興奮してた彼女がすっかり落ち着き、うっとりした表情になっていた。