第48章 柱合裁判<肆>
そんな彼に、汐は顔を上げて高らかに言い放った。
「大丈夫です!炭治郎ははっきり言ってお馬鹿なことを沢山言いますけれど、絶対に自分の意思を曲げたりはしないんです。今は無理かもしれないけれど、でも絶対に炭治郎と禰豆子は十二鬼月も、鬼舞辻も倒せるって信じてます!!」
汐の言葉に柱達が我慢できずに吹き出す。汐はそんな彼らを睨みつけようとしたが、耀哉がやんわりとそれを制止した。
「鬼殺隊の柱たちは当然、抜きん出た才能がある。血を吐くような鍛練で自分を叩き上げて、死線をくぐり、十二鬼月をも倒している。だからこそ、柱は尊敬され、優遇されるんだよ。炭治郎も汐も、口の聞き方には気を付けるように」
「は、はい・・・」
「ごめんなさい」
二人は赤くなりながら縮こまり、そんな二人を甘露寺は頬を染めながら見ていた。
「それから実弥、小芭内。あまり下の子に意地悪しないこと」
伊黒と不死川は思い切り不服そうな顔をしながらも頭を下げ、「御意」と答えた。
不死川の傍らでは、ひどい扱いを受けた禰豆子が頭から湯気を出しながら箱に戻っていた。
「炭治郎の話はこれで終わり。そして次は、汐。君の番だね」
「はひ?」
不意に名を呼ばれた汐は、素っ頓狂な声で返事をしてしまう。その間抜けさに甘露寺が思い切り吹き出してしまうが、慌てて顔を抑えた。
「君に一つ断っておきたいことがあるんだ。実は、私は君が隊律違反を犯していてもいなくても、ここへ呼ぶつもりでいたんだよ。どうしても君に、青髪の少女に会っておきたくてね」
「え?あたし?青髪の少女って、ええ?」
わけがわからないと言った様子で汐は耀哉を見つめる。(不死川はそんな汐を屋敷の中から睨みつけていた)
すると彼はにっこりとほほ笑んで、心からうれしそうな声で告げた。
「待っていたよ、大海原汐。いや、今はこう呼んだ方がいいかな」
―――君が来るのを待っていたよ、【ワダツミの子】
その季節にしては妙に肌寒い風が、汐の真っ青な髪を静かに揺らしながら通り過ぎていった。