第48章 柱合裁判<肆>
「!!」
驚いて目を見開く不死川に、安堵の表情を浮かべる汐と炭治郎。禰豆子は顔を背けたまま、目を固く瞑り明確な拒絶を示していた。
「・・・どうしたのかな?」
耀哉が状況を聞くと、お付きの少女達は「鬼の女の子はそっぽ向きました」「不死川様に三度刺されていましたが、目の前に血塗れの腕を突き出されても、我慢して噛まなかったです」と答えた。
「ではこれで、禰豆子が人を襲わないという証明ができたね」
耀哉の言葉に不死川は悔しそうに唇をかみ、汐と炭治郎は肩を震わせた。
義勇に手を掴まれていた伊黒は、その手を振り払うと何のつもりだと問いただす。しかし義勇はそれに答えず炭治郎と汐の背中を見つめていた。
「炭治郎。それでもまだ、禰豆子のことを快く思わない者もいるだろう。証明しなければならない。これから、炭治郎と禰豆子が鬼殺隊で戦えること、役に立てること」
不思議な高揚感を感じ炭治郎と汐はそのまま跪き頭を下げる。炭治郎はともかく、汐は今までこのように頭を誰かに下げたことは滅多になかった。
その彼女ですらこのような気持ちにさせる。柱達が心酔する意味が分かった気がした。
(何?この感じ。ふわふわする・・・。この人の声の波長が、あたしたちの心を落ち着かせているんだわ・・・)
(声。この人の声で頭がふわふわするのか?でも、これは汐の歌とおなじ・・・)
「十二鬼月を倒しておいで。そうしたら皆に認められる、炭治郎の言葉の重みが変わってくる」
炭治郎の胸の中に温かいものがこみ上げてくる。彼は一度目をつぶると、決意を込めた眼で耀哉を見つめた。
「俺は・・・俺達は、鬼舞辻無惨を倒します!!俺達がが必ず!!悲しみの連鎖を断ち切る、刃を振るう!!」
炭治郎の迷いのない声は、庭中に響き渡る。そんな彼に耀哉は笑みを浮かべながら「今の炭治郎達には出来ないから、まずは十二鬼月を一人倒そうね」と、幼子に言い聞かせるように言った。
その言葉に炭治郎の全身が瞬時に真っ赤に染まり、何人かの柱達が笑いをこらえた。