第47章 柱合裁判<参>
“──炭治郎が、鬼の妹と共にあることをどうか御許し下さい”
“禰豆子は強靭な精神力で、人としての理性を保っています”
“飢餓状態であっても、人を喰わず、そのまま二年以上の歳月が経過致しました”
“俄(にわか)には信じ難い状況ですが、紛れもない事実です”
“もしも、禰豆子が人に襲いかかった場合は、竈門炭治郎及び──・・・”
“鱗滝左近次、冨岡義勇、そして大海原汐が腹を斬ってお詫び致します”
「!?」
手紙を読み終えたとき、炭治郎は眼を見開き思わず汐と義勇を見た。自分ならまだしも、鱗滝、義勇、そして何より汐が自分の業を背負う覚悟があるということに、彼の両目から涙があふれ出した。
(炭治郎、黙っててごめんね。あたし、鱗滝さんがあの手紙を書いているところを見ちゃったんだ。でも、本当はあの手紙がなくても、禰豆子を受け入れたあの日からあたしの心は決まっていた。何があっても二人を守る。でも、もしも禰豆子が人を襲ってしまったら、あたしもみんなと運命を共にするって。そう決めていたんだ)
しばしの沈黙が流れた後、不死川が静かに口を開いた。
「切腹するから何だと言うのか。死にたいなら勝手に死に腐れよ、何の保証にもなりはしません」
「不死川の言う通りです。人を喰い殺せば、取り返しがつかない!!殺された人は、戻らない!」
不死川に続いて煉獄の凛とした声が響く。二人の意見は変わらず、禰豆子を認めるつもりは微塵もない様だ。
「確かにそうだね」
そんな二人を諫める様子もなく、耀哉はゆったりした声色のまま続けた。
「人を襲わないと言う保証ができない、証明ができない。ただ、人を襲うと言うこともまた、証明ができない」
その言葉に不死川の表情が微かに歪んだ。