第47章 柱合裁判<参>
耀哉が部屋に入るとお付きの少女たちが襖を閉める。そして二人は彼の手を取りゆっくりと前へと足を進めた。
その仕草から、彼の目は光を見ることができないということが見て取れた。
「おはよう、みんな。今日はとてもいい天気だね。空は青いのかな?顔触れが変わらずに半年に一度の“柱合会議”を迎えられたこと、嬉しく思うよ」
汐と炭治郎は耀哉からのゆったりとした声に、縫い付けられたかのように動かなくなった。
(この人が、鬼殺隊の一番上の、お館様・・・でもあの顔・・・怪我?じゃないわよね。もしかして、病気・・・)
汐がそれ以上を考える間もなく、突然頭を誰かにつかまれ引き倒された。いつの間にか両手は縛りなおされ、猿轡もさらにきつく締めあげられていた。
左手に激痛が走り、思わず小さく息をつく。
(速い!しかも全然気配が感じられなかった・・・!これが、柱の力・・・)
汐が横目で見上げると、すぐそこには伊黒の姿があった。彼が汐の頭を抑えつけていたのだ。
反対側では炭治郎が不死川に押さえつけられ、汐と同じように引き倒されていた。
汐は何とか起き上がろうとしたが、周りを見て目を見開いた。柱全員が跪き、頭をたれている。
それだけで、産屋敷耀哉という人間が偉大であるということが汐でも瞬時に理解できた。
「お館様におかれましても、御壮健で何よりです。益々の御多幸を切にお祈り申し上げます」
炭治郎を押さえつけたまま不死川が声を上げる。先ほどまでの荒々しさはなりを潜め、その口調は凛としていた。
そんな彼に耀哉は礼を言い、甘露寺は少し不服そうに頬を膨らませた。
「畏れながら柱合会議前に、この竈門炭治郎なる鬼を連れた隊士について、ご説明いただきたく存じますが、よろしいでしょうか?」
不死川の変りように汐と炭治郎は呆然としたまま、微妙な顔で話を聞いていた。
そんな彼らの心中をよそに、話は進んでいく。
「そうだね、驚かせてすまなかった。炭治郎と禰豆子の事は、私が容認していた。そして、皆にも認めて欲しいと思っている」
(え!?)
耀哉の思いがけない言葉に、汐と炭治郎は勿論柱たちも顔色を変えた。さらに、彼は炭治郎だけではなく妹である禰豆子の名前も知っていた。
一体どういうことなのだろうと汐と炭治郎が思ったとき、口を開いたのは悲鳴嶼だった。