第47章 柱合裁判<参>
炭治郎が不死川に飛び掛かろうとしたとき、背後で何かが砕け散る音がした。それと同時に、炭治郎の横を青いものが凄まじい速さで通り過ぎた。
拘束具を引き千切った汐が、炭治郎の脇を駆け抜け不死川に飛び掛かったのだ。
炭治郎に気をとられていた彼は汐の存在を失念していたため反応がわずかに遅れた。しかしそれでも刀を汐に向けて降りぬこうとする。
だが、その刃が汐に届く前に不死川の動きが止まった。そのわずかな隙に、汐は右拳を不死川の顔面に渾身の力を込めて叩きつけた。
破裂音が高らかに響き、不死川の体がぐらりと傾く。さすがに吹き飛ばされはしなかったが、それでも体勢を立て直すことができず膝をついた。
左頬は赤く腫れ、口からは血が流れだしている。
炭治郎は勿論、他の柱も呆然と膝をつく不死川と、拳を振り下ろしたままの汐を眺めていた。
ただ、甘露寺だけが(ええええ!?不死川さんが女の子に殴られちゃった!?)と、口を押えて目を見開いていた。
「て、テメエ・・・」
不死川が立ち上がろうとしたとき、汐の口から凄まじい怒声が響いた。
「ふざけてんじゃあねーぞォォォ!!!」
そのあまりの声の大きさに、空気がびりびりと音を立てて震える。