第46章 柱合会議<弐>
「大丈夫ですよ。自白毒なんて入っていませんから。あなたが私を信用できない気持ちはわかりますが、今は信じていただけると嬉しいです」
そういうしのぶの眼は嘘をついて言はいない様だ。だが、簡単に信用しきるわけにもいかない。結局、横で炭治郎が水を飲み始めたため汐も瓢箪に口を付けた。
「怪我が治ったわけではないので無理はいけませんよ」
炭治郎は一呼吸置いた後、徐に口を開き話し始めた。
「鬼は俺の妹です。俺が家を留守にしている間に襲われて、帰ったらみんな死んでいて――。妹は鬼になりました。だけど、人を食ったことはないんです。今までも、これからも、人を傷つけることは絶対にしません」
「くだらない妄言を吐き散らすな。そもそも身内なら庇って当たり前。いうこと全て信用できない、俺は信用しない」
「あああ・・・鬼に取り憑かれているのだ。早くこの哀れな子供を殺して解き放ってあげよう」
炭治郎の言葉を、伊黒と悲鳴嶼は真っ向から否定する。そんな二人を汐は鋭い眼で睨みつけた。
「聞いてください!俺は妹を、禰豆子を治すために剣士になったんです。禰豆子が鬼になったのは二年以上前のことで、その間禰豆子は人を食ったりしていない!」
「そうよ!あたしも禰豆子とは一年以上一緒にいるけれど、その間人を食ったところなんて見たことない!!」
我慢できずに汐も口をはさむと、宇随は呆れたようにそれを遮った。
「話が地味にぐるぐる回っているぞ阿呆共が。人を食ってないことこれからも食わないこと。口先だけでなくド派手に証明して見せろ」
「証明?そんなものあたしが何よりの証拠よ!あたしは禰豆子と一緒に戦ったし、襲われるどころか何度も命を助けられた。それにあたしは二人とは血のつながりのない赤の他人。だから身内でもない!何ならあたしの着物をひん剥いて調べたっていい!噛み傷なんて小さいころに鮫に襲われてできたものだけよ!!それじゃあだめなわけ!?」
汐のよく通る声が庭中に響く。皆呆然と汐を見ていたが、汐は眼に怒りを宿しながら柱たちを睨みつけた。