第46章 柱合会議<弐>
「まずは竈門炭治郎君から。あなたは鬼殺隊員でありながら、鬼を連れて任務にあたっていた。これは隊律違反に当たります。そのことは、お二人ともご存じですよね?」
しのぶの言葉に、二人は言葉を発することなく彼女を見上げる。そのことは汐も炭治郎もわかっていた。
けれど、鬼が炭治郎の妹であり人を襲わない優しい鬼であることを二人は誰よりも知っていた。だからこそ、違反であっても手放すわけにはいかなかった。
「そして大海原汐さん。あなたは間接的とはいえ鬼殺の妨害幇助。そして、拘束の際に抵抗し隠の方に軽傷を負わせた傷害の罪もあります」
「え!?」
傷害と聞いて汐は思い切り肩を震わせた。
「傷害って何!?あたしそんなことしていない!知らないわよ!!」
汐が声を荒げると、しのぶは微かに目を見開いたがすぐに元の表情に戻り、淡々とと答えた。
「あなたが知らなくても実際に負傷者は出ていますし、目撃者もいます。あなたが怪我を負わせたのは事実なんですよ」
有無を言わせない言葉に、汐は言葉が出ずにうつむいてしまう。そんな汐を炭治郎は信じられないという目で見つめていた。
確かに汐は怒ると手を上げてしまう傾向がある。けれどそれは理不尽に振るわれるものではないし、何よりも、汐からは嘘をついている匂いはしなかった。
しかし同じく、しのぶからも嘘の匂いはしない。その矛盾した事実にめまいを起こしそうになっていた。
「さて、竈門炭治郎君。何故、鬼殺隊員でありながら鬼を連れているんですか?」
「聞くまでもねえ」
宇随は吐き捨てるように言いながら、背中の日輪刀に手をかける。それをしのぶは軽く制止してから、炭治郎に話してくれるように促した。
炭治郎は口を開き、禰豆子の事を説明しようとした。が、息を吸った瞬間喉に焼けつくような痛みが生じ、思い切り咳き込む。
「炭治郎!・・・ッ!」
汐が思わず叫ぶと、叫びすぎたせいか彼女も炭治郎同様に咳き込む。しのぶはそっと二人に近寄ると。、それぞれに瓢箪を差し出した。
「水を飲んだ方がいいですね。竈門君は顎を、大海原さんは喉を傷めていますから、ゆっくり飲んで話してください。それぞれに鎮痛薬が入っていますから楽になりますよ」
汐は警戒心を込めた眼でしのぶを見つめた。この人はあの山で禰豆子を殺そうとした張本人だ。簡単に信用していいものなのか、わからない。