第46章 柱合会議<弐>
「おい!いい加減に起きろよ。そろそろ始まるぞ」
頬を軽くたたかれて、汐はゆっくりと目を開けた。太陽の光が目に入り、まぶしさに思わずぎゅっと目を閉じる。
「やっと起きたか。何べん呼んでも目を開けないから死んだかと思ったぞ。まあ、死なれたら今は困るんだけどな」
汐の眼に入ったのは、黒い布で顔を隠したおそらく男。気が付くと汐は両手を拘束具で固定され、身動きが取れない状態になっていた。
「ちょ、ちょっとちょっと、何よこれ!?なんであたし縛られてんの?そしてここ何処?炭治郎と禰豆子は?みんなは?」
「あーもう、うるせえな。質問ならひとつづつにしてくれ。俺の体は一つしかないんだ」
隠の男はため息をつくと、汐の質問にひとつづつ応え始めた。
「まず、ここは鬼殺隊の本部。お前はこれから裁判を受けるんだ」
「裁判?裁判って悪いことをしたら受けるあの裁判?なんで?」
「お前は隊律違反を犯したからだ。何の違反かは俺も知らん。ただ、ここに呼ばれるってことは相当のことをしたってことだな」
隠の言葉を聞いて汐の顔が青ざめる。まさかこの年で前科持ちになってしまうとは、玄海が聞いたら拳骨だけじゃすまなかっただろう。
だが、汐は自分が裁判を受けるようなことをした覚えが浮かんでこず、口を開いた。
「それって何かの間違いじゃない?あたし裁判を受けるようなことをした覚えなんてない。きっと冤罪って奴ね!で、あたしの弁護人は何処にいるの?」
「はあっ!?弁護人!?いるわけないだろ!それに冤罪なんてあるわけない!適当なことを言うな!」
「適当抜かしてんのはそっちでしょ!?なんで弁護人がいないのよ!弁護人のいない裁判なんて裁判じゃない!あたしが頭悪いからってバカにしてんじゃあねーわよ!いないなら呼んでよ!こっちは人生かかってんのよ!つべこべ言わずに弁護人を呼べェェェェェ!!!」
汐の耳をつんざくような怒声に、流石の隠の男もぷっつりと切れた。
「だからんなもんいるわけねーって言ってんだろうが!!てめーの顔の両脇についているのは飾り物か!?いいからさっさと行きやがれ!!」
そう叫ぶと男は汐の背中を思い切り蹴り飛ばした。うめき声をあげて倒れこむと、砂利が顔に食い込み痛みが走る。