第45章 柱合裁判<壱>
一方、義勇の手助けでその場を逃げ出した炭治郎と禰豆子は、暗い森の中をひたすら走っていた。
身体がすでに限界を迎えつつある炭治郎は、激しい痛みに涙をこらえながらも、呼吸を使いながら走り続ける。
走っている最中に禰豆子が目を覚ますが、炭治郎はそれすら気づかずに走り続けた。
(俺は鬼殺隊を抜けなければならなくなるのか?いくら妹とはいえ、鬼を連れてる剣士なんて認められない・・・)
――ごめん、汐。お前とも会えなくなるのかもしれない・・・
夢中で走っていた炭治郎は、背後から迫るもう一人の追跡者に気づくことができなかった。
追跡者は炭治郎の背中を思い切り蹴り飛ばすと、そのまま反動で前に飛ばされた禰豆子の前に降りたつ。
白い羽織を纏った、黒髪の蝶の飾りを付けた少女だ。年齢は炭治郎とさほど変わらないように見える。
彼女は刀を抜くと、躊躇なく禰豆子の頸へ刃を振るおうとした。が、炭治郎が羽織を引っ張り寸前でそれを阻止する。
剣士の少女は炭治郎の背中に尻餅をつきその衝撃に炭治郎も呻くが、構わず禰豆子に逃げるよう叫んだ。
禰豆子は兄に言われたとおりに森の奥へと足を進める。そんな中、少女は炭治郎の頭にそのかかとを叩き込んだ。
白目をむいて気を失う炭治郎を放置し、彼女は禰豆子を追って走り出す。
だが、その刃が禰豆子の頸を穿とうとしたその時、禰豆子は身体を縮ませ幼子の姿になった。
(小さく、子供になった)
小さくなった禰豆子はそのままとてとてと足音を立てながら走り出す。少女もその後を追い、何度か刀を振るうが禰豆子は小さな体でそれを巧みに躱して言った。
(逃げるばかりで少しも攻撃してこない。どうして?)
少女は一向に反撃してこない禰豆子に疑念を抱くが、言われたとおりに鬼を斬るだけと考えを固定し禰豆子をひたすら追うのだった。