第45章 柱合裁判<壱>
(駄目!あの人を禰豆子の所へ行かせるわけにはいかない!!)
汐は無意識に息を吸っていた。高い弦をはじくような音がする。
「止めて!!!」
汐がそう叫んだ瞬間。ピシリという空気が張り詰めるような音と共に、突然しのぶの動きが止まった。
「え・・・?」
その光景にしのぶをはじめ、汐、義勇ですら目を見開く。
「これは・・・いったい・・・どういう・・・ことでしょう?」
しのぶはぎりぎりと手足を震わせながら途切れ途切れに言葉を紡ぐ。その顔には先程の笑みは消え、微かだが焦燥が見えている。
「あなた・・・ですか・・・?」
しのぶの眼が汐を捕らえるが、汐はしのぶを睨みつけるようにしながら低い声で言った。
「あの二人を引き裂く者は、誰であろうと許さない。鬼だろうが、人間だろうが・・・」
それだけを言うと汐は地面にぱったりと倒れ伏し、意識を失った。
それと同時にしのぶの体が不意に自由になり走り出す。だが、義勇にとってはそのわずかな時間も好機だった。
駆け出したしのぶに、義勇はすぐさまその手を伸ばすのであった。