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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第44章 絆<肆>


――ウタカタ・伍ノ旋律――
――爆砕歌(ばくさいか)!!!

だが、万全じゃない状態の汐から放たれた声の大砲は、威力がほとんど出ず軽く累の髪と着物を薙いだだけだった。しかし、それでも彼は足を止めるとゆっくりと振り返った。

「ああ、そうだった。元々いえば、お前が余計なことをしなければこいつらが妙な力に目覚めることはなかったんだよね」

累は思い出したように言うと、くるりと向きを変えて汐に視線を向ける。怒りと殺意に満ちた眼が汐の眼を鋭く穿った。

「いいよ、もう。お前をかけら一つ残さない程ズタズタに切り刻んで、思い切り絶望させてからあの兄妹を殺そう。なんでかは知らないけれど、あいつはお前に執心みたいだからね」

そう言って累は、血を含んだ真っ赤な糸を両手にあやとりの様にかけた。

――血鬼術・殺目籠(あやめかご)――

汐の周りにいくつもの糸が出現し、籠のように重なり彼女に迫る。先ほど無理をして撃った爆砕歌の影響で、ほどんと動くこともできずに赤い糸を見つめていた。

「やめろーーッ!!!」

遠くで炭治郎がかすれた声で叫ぶが、累には届かない。赤い糸はみるみるうちに汐に迫り、彼女の体を少しずつ切っていく。

(くそっ、くそっ!くそっ!!こんなところで死ぬわけには・・・もう一回。もう一回爆砕歌を使って・・・)

最後の最後まで汐は足掻こうと必死で息を整える。しかし、糸の籠は無情にも汐の全身を切り刻もうとしていた。
痛みを覚悟し、汐が硬く目を閉じたその時。

一陣の風が、鋭く吹いた。それと同時に、汐の周りの糸がばらりと落ちる。自分のものでも、炭治郎のものでもないこの風は・・・

(誰・・・?)

汐が問いかける前に、体がぐらりと傾く。が、そんな彼女の体を、誰かがとっさに支えた。

汐が目を見開くと、そこには左右半分が無地・左半分が亀甲柄の羽織を着た青年、冨岡義勇の姿があった。
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