第44章 絆<肆>
(そんな・・・そんな・・・・嘘よ・・・!だってあいつは・・・あいつは確かに炭治郎が頸を・・・!)
だが、汐の嫌な予感は的中してしまった。倒れ伏す炭治郎の背後に、真っ白い着物をきた胴体だけの累が立っている。
汐に吹き飛ばされた部分はすっかり治り、その手には糸がつながれている。その糸の先には、斬ったはずの彼の頸が逆さまになって吊られていた。
「僕に勝ったと思ったの?」
その場にいた全員を絶望に突き落とすような声が響く。
「可哀そうに。哀れな妄想をして幸せだった?わかっていない様だから教えてあげる。僕は自分の糸で頸を切ったんだよ。お前に頸を斬られるより先に」
炭治郎は地面を這うようにして先に進む。その先には彼と同じく倒れ伏す禰豆子の姿があった。
そんな炭治郎を累は心底軽蔑しきった眼を向け、吐き捨てるように言った。
「もういい。お前ら全員殺してやる。こんなに腹が立ったのは久しぶりだよ。不快だ、本当に不快だ。前に同じくらい腹が立ったけれど、ずっと昔だよ。覚えてないけど」
累は歩きながら自分の頭部を元の位置に戻す。斬られた部分が溶けるように重なり、傷口が綺麗に消えた。
(まずい、まずいまずい!!早く呼吸を整えなければ、炭治郎と禰豆子が殺される!!)
汐は焼けつくような痛みに必死に耐えながら、体を起こす。何とかして奴の注意をそらさなければ、二人の命はない。
「そもそもなんでお前は燃えてないのかな?僕と僕の糸だけ燃えたよね?妹の力なのか知らないが、苛々させてくれてありがとう。何の未練もなくお前達を刻めるよ」
そう言って糸を引き絞る累の顔には、これ以上ない程の怒りと憎しみが隠すことなく刻まれていた。鬼の気配と合わさり、凄まじい殺意が感じられた。
「や・・・やめろ!!!」
汐は立ち上がると、大きく息を吸い、累に向かって放った。