第43章 絆<参>
(駄目だ・・・!このまま汐を行かせてはだめだ!)
累に突っ込んでいく汐の背中を見ながら、炭治郎は悔しげに顔をゆがませた。
汐からは強い決意と覚悟の匂いがした。それは、自分の命さえ犠牲にするほどの強すぎる覚悟。このまま自分の命と引き換えに、道を切り開くつもりだということを理解した。
そしてもうひとつ。炭治郎には確信していることがあった。
――汐を死なせたら、すべてが終わりだ。
炭治郎は必死に考えた。どうすれば汐を救える?どうすれば彼女を守れる?
自分がここまでこれたのは、汐がそばにいてくれたから。彼女の声が、存在がいつも自分を奮い立たせてくれていたのだ。
そんな汐が、自分を犠牲にするなんて間違っている。そんな悲しいことなど、させたくはない。
それに自分は、汐に大切なことを伝えていない。
(考えろ!考えろ!!考えろ!!!)
炭治郎は必死で考えを巡らせる。そんなときだった。
――炭治郎。呼吸だ。
炭治郎の脳裏に言葉が浮かぶ。それはかつて、幼い自分に呼吸法を教えてくれた、今は亡き父『竈門炭十郎』。
――息を整えて、ヒノカミ様になりきるんだ・・・
その瞬間、炭治郎の体は汐の方に向かって駆け出していた。大切なものを守る、確かな決意と覚悟を持って。