第5章 嵐の前の静けさ<肆>
それから遅れて到着した鬼殺隊員により、村の検証と村人の葬儀が行われた。
村に入り込んでいた鬼たちは全員討伐されたが、確認された生存者は汐だけであった。
絹はそのあと、村の外れで彼女のものと思われる着物が、おびただしい血液のついた状態で発見されたため、死亡と判断された。
そして、生き残った汐は、義勇の手当てを受け休んでいた。
眠っている汐を眺めながら、義勇は先ほど鬼殺隊員が見つけた書物を読んでいた。
それは、玄海がもしもの時のためにと残しておいた書状だった。
驚くことに、玄海はこのような事態を予測していたかのように、自分に何かあったとき。汐が生き残ったときにはどうすればいいかということが事細かく記されてあったのだ。
(しかし、また先生の元へ人を送ることになるとはな)
これが運命なのか因縁なのか。義勇は自嘲気味に小さくため息をついた。
それはまだ半年近く前の事。とある山で家族が鬼に惨殺される事件が起きた。そして、その家族の一人が鬼と化し、それを守ろうとする少年と出会い、義勇は彼をかつての師であった鱗滝の元へと推薦した。
しばらくすると、汐は意識を取り戻し、義勇から眠っていた間のことを聞かされた。
始めは少し動揺したが、そのあとは俯き何かを考えているようだった。
(村を滅ぼされ、育ての親は鬼化し、そして自らの手でその引導を渡した)
普通の人間なら発狂してもおかしくない。そんな極限状態の汐を、このままいかせてよいのだろうか。そんな迷いが義勇の中に生まれ始めたころ。
汐が突如口を開いた。