第41章 絆<壱>
(こんな、こんな冷たく吐き気がする関係を家族だなんて、笑えもしない)
累の冷徹さに、汐の体は怒りとおぞましさに震えた。炭治郎も同じく、険しい表情でそのやり取りを見ていた。
そんな時だった。
「坊や。話をしよう。出ておいで」
先程の冷徹な声とは裏腹に、穏やかな声で累は言った。その豹変振りに汐と炭治郎は、訝し気に彼を見つめる。
「僕はね、感動したんだよ。君たちの‘‘絆‘’を見て、体が震えた。この感動を表す言葉はきっとこの世にないと思う」
炭治郎は禰豆子を抱きしめ、汐は二人を背中に庇うようにしながら、累の言葉を静かに聞いていた。
「でも、君たちは僕に殺されるしかない。悲しいよね、そんなことになったら。だけど、回避する方法が一つだけある」
――君の妹を、僕に頂戴。大人しく渡せば、君も、青髪のそいつも命だけは助けてあげる。
「・・・は?」
汐の口から思わず声が漏れた。今言ったことの意味が全く分からず、理解が追いつかない。
それは炭治郎も同じだったらしく、彼の口からも「何を言っているのか分からない」という言葉が出てきた。
「君の妹は僕の妹になってもらう。今日から」
更に紡がれた累の言葉に、汐は眩暈がした。
(こいつ・・・頭がいかれてるの?禰豆子があんたの妹になんかなるわけないじゃない)
汐が拳を握りしめると、炭治郎はその手に触れ静かに制止させた。そして禰豆子をさらにぎゅっと抱きしめる。
「そんなことを承知するはずないだろう!それに禰豆子は物じゃない。自分の想いも意思もあるんだ。お前の妹になんて、なりはしない!!」
「大丈夫だよ。心配いらない。‘‘絆‘’を繋ぐから。僕の方が強いんだ。恐怖の“絆”だよ。逆らうとどうなるか、ちゃんと教える」
余りにも身勝手且つ意味不明な言葉に、汐は思わず飛び出しそうになった。が、彼女がてっぺんに来る前に、炭治郎が切れた。