第41章 絆<壱>
「ふざけるのも大概にしろ!!」
空気を震わせる大声が、静かな森に響き渡る。
「恐怖でがんじがらめに縛り付けることを家族の絆とは言わない!その根本的な心得違いを正さなければ、お前の欲しいものは手に入らないぞ!」
炭治郎の言葉が気に障ったのか、累は小さくため息をつくと、苛立ちを隠そうともしない様子で口を開いた。
「鬱陶しい。大声出さないでくれる?合わないね、君とは」
(それはこっちの台詞よ。どこまでも性根の腐った奴だわ)
汐が殺意のこもった眼で累を睨みつけていると、炭治郎は汐の耳に唇を近づけ「禰豆子を頼む」とだけ告げた。
困惑する汐に禰豆子を預けると、炭治郎は箱を投げ捨て累の前に立ちはだかった。
「禰豆子をお前なんかに渡さない!!」
「いいよ別に、殺して奪(と)るから」
炭治郎の凛とした声とは対照的に、累は淡々と言い放った。そんな彼に臆することもなく、炭治郎はそれより先に頸を斬ると宣言した。
すると累はにやりとした笑みを炭治郎に向けた。
「威勢がいいなぁ、できるならやってごらん」
――十二鬼月である僕に勝てるならね
累はそう言って髪で隠れていた左目を曝け出す。そこには【下伍】という数字が刻み込まれていた。