第41章 絆<壱>
一方。その様子を見ていた累の姉鬼は、呆然と汐達が消えた方向を見つめていた。
(あの子の背負っている箱から別の女の子が・・・でも、気配が鬼だわ。人間が鬼と一緒にいるなんて・・・)
そして累に視線を向けると、彼の体が小刻みに震えている。そしてそのまま人差し指を向けて、震える声で言った。
「その女・・・お前の・・・・兄妹か?」
「だったらなんだ!!」
累の言葉に炭治郎は声を荒げる。汐は包帯をきつく縛り、苦しげに呻く禰豆子の汗をぬぐっていた。
「兄妹・・・兄妹・・・。妹は鬼になっているな・・・。それでも一緒にいる・・・」
「る、累?」
「妹は兄を庇った。身を挺して・・・」
――本物の‘‘絆’’だ!!欲しい!!!
「ちょっ、ちょっと待って!!」
累の言葉に姉鬼は思わず前に飛び出して言った。
「待ってよお願い!!私が姉さんよ!!姉さんを捨てないで!!」
「黙れ!!」
累は糸を姉鬼に向かって飛ばし、彼女の体を斬り飛ばした。
轟音と共に土煙がもうもうと上がり、木が数本倒れていく。
「結局お前たちは、自分たちの役割もこなせなかった。いつもどんな時も・・・」
頸だけになった姉鬼の体に、累は吐き捨てるようにそう告げる。姉鬼は涙を流しながら累を見上げ、かすれた声で言った。
「ま、待って。ちゃんと私は姉さんだったでしょ?挽回させてよ・・・」
「だったら山の中をチョロチョロする奴らを殺してこい。そうしたら《《さっきの事》》も許してやる」
累は目も合わせないまま姉鬼に冷たく言い放つ。
「わ、わかった。殺してくるわ」
姉鬼は再生した体で頭部を抱えると、森の中へと消えていった。