第41章 絆<壱>
「どう?まださっきの言葉を取り消す気にならないのか?」
炭治郎は歯を食いしばりながら累を睨みつけ、汐は吐き捨てるように言い放った。
「あんたって結構しつこいのね。何度言われたってあたしたちは自分の言った言葉を覆すつもりなんてさらさらないわよ!」
累の眼が汐の方へ動くと、彼は小さく「わかった」と呟いた。そして、
「なら、ズタズタになりな」
左腕を大きく引くと、汐と炭治郎の眼前にいくつもの糸でできた壁が現れた。二人を覆い尽くさんほどの大きさに、思わず足が止まる。
(駄目・・・!よけきれない!)
身体に糸が食い込む衝撃に少しでも耐えようと、汐は硬く目をつぶった。
肉が切り裂かれるような音と、液体が飛び散る音が響く。だが、自分の体には痛みもなく、隣にいる炭治郎も姿を保っている。
――なら、今飛び散っている血は誰のものだ?
汐が目を開けるとそこには
汐と炭治郎を庇うように立ち、全身を鋼の糸で斬りつけられた禰豆子の姿があった。
「「禰豆子ッッ!!!」」
二人の叫び声があたりに木霊する。斬られてしまった禰豆子は体勢を崩し、それを炭治郎がとっさに受け止めた。
そしてそのまま彼女の体を抱えて移動する。
「禰豆子!禰豆子!!しっかりして禰豆子!!」
「兄ちゃんたちを庇って・・・!ごめんなっ・・・!!」
禰豆子を木のそばに座らせ、傷の具合を見る。あちこちが切り刻まれているが、特に手首の傷が深く今にも千切れそうだ。
汐はすぐさま包帯を取り出すと、禰豆子の手に硬く巻き付ける。少しでも早く治るように、二人は必死の思いで祈った。