第41章 絆<壱>
飛び交う糸の間を二人は走り回り、目を合わせながら連携した動きをとる。
刺激臭も薄まり、炭治郎の鼻は糸の匂いを感知することができ始め、汐も慣れてきたのか糸にまとわりつく鬼の気配を読み取れるようになってきた。
「汐。俺が前に出るから、お前は援護を頼む」
「わかった。しくじったら許さないわよ」
炭治郎は汐と目を合わせてうなずくと、累に向かって駆け出した。
(思ったより頭が回る奴らだ。二人とも恐怖にひるまない。特にあの青髪の奴。前の奴がうまく立ち回れるように動いている)
――まあ、関係ないけどね。
炭治郎は地面を蹴り大きく跳躍すると、大きく息を吸った。
飛び上がった炭治郎に、累の糸が迫る。
――水の呼吸――
壱ノ型 水面斬り!!
炭治郎の漆黒の刃が、糸に向かって横なぎに振るわれる。が、その糸は斬れることはなく、反対に炭治郎の刀身を真っ二つに折ってしまった。
「えっ?」
斬られることのなかった糸は、炭治郎の顔を斜めに切り裂く。そのまま地面に叩きつけられた彼は、ごろごろと地面を転がった。
「炭治郎っ!!!」
汐はすぐさま踵を返し、炭治郎の下へ駆け寄ろうとする。だが、累の糸はそれを簡単には許さず、汐の青い羽織を切り刻んだ。
(そんな・・・炭治郎の刀が折れるなんて・・・!あの糸はさっきの化け物の体よりも硬いっていうの!?)
糸を何とか躱しつつ炭治郎の下へ向かう汐。炭治郎は呆然と折れた刀を見つめている。
(刀が折れた状態じゃまともに戦うことは難しい。なら、あたしが炭治郎を守らなきゃ!)
汐は炭治郎を庇うように前に立つと、累に切っ先を向けた。刀身が濃い紺色へと変化する。
「炭治郎立って!次が来る。今は落ち込んでいる場合じゃないわよ!」
汐の言葉通りに間髪入れずに累の糸が二人に迫ってきた。地面をえぐりながら襲い来る糸を寸前で躱し間合いを詰めようとするが、糸は素早く生き物のようにしなり二人の接近を許さない。
簡単には殺さないと言っていたように、糸は加減されているようで急所をなかなか狙ってこない。それでもここまで二人を追い詰めていく累の強さに、汐は悔し気に唇をかんだ。