第41章 絆<壱>
二人の声が累を穿ったその時、彼の手から二人に向かって糸が伸ばされた。
二人はその糸をかわすが、炭治郎は完全には避けきれず左ほおに小さな傷を作った。
汐が怯む間もなく次の糸が彼女のに向かって伸ばされる。とっさに刀で受け流すが、受け流された糸は、汐の背後の大木をいとも簡単に切断した。
(あんな大木を刺身みたいに軽く切断する糸。捕まればあれで全身を切り刻まれておしまいね!!)
炭治郎が隙を見て斬りかかるものの、死角から襲い来る糸の結界にうまく間合いに入り込めない。それどころか累は糸をどこまでも伸ばせるのか、距離をとっても生き物の様に襲い来る。
いつの間にか二人の羽織は刻まれ、顔にも複数の切り傷ができていずれからも血が流れていた。
累の強さに汐は顔をゆがませ、息を乱す炭治郎を見る。二人掛でも間合いにすら入れないことに、段々と焦りが芽生えてきた。
「言っておくけど、お前等は一息では殺さないからね。うんとズタズタにした後で刻んでやる。でも、さっきの言葉を取り消せば、一息で殺してあげるよ」
累の淡々とした言葉に、汐は鼻で笑う。その態度に、彼の眉根が微かに下がった。
「どっちにしろ殺すんじゃない。あんた、言葉の使い方勉強しなおしたほうがいいわよ。それに、あたしは取り消すつもりなんてハナからないわ」
「俺もだ。俺と汐の言ったことは間違っていない!!おかしいのはお前だ!!」
――間違っているのは、お前だ!!
二人の声が再び響き、累の鼓膜を揺らす。彼は糸を大きく広げると、二人に向かって放った。