第40章 蜘蛛の棲む山<肆>
「馬鹿っ!!そいつに手を出すんじゃない!!」
汐がそう叫んだ瞬間。累が手の指に絡まっていた糸を隊士の方へ伸ばした。その糸は一瞬で隊士の全身を細切れに刻み、ただの肉塊へと変えてしまった。
その残酷な殺し方に、汐と炭治郎は青ざめ言葉を失う。
「ねえ、なんて言ったの?」
累は先ほど人を殺めたばかりとは思えない程の静かな口調で汐と炭治郎に問いかけた。
凄まじい殺気を感じ、二人は刀を構え睨みつける。
「お前等、今なんて言ったの?」
全身が痺れるような殺気に、二人の顔から冷たい汗が流れ落ちた。累の眼からは、二人に対して確かな敵意を感じる。
(こいつを相手にするのは、かなり骨が折れそうだわ。だけど、ここで逃げるわけにはいかない!!)
汐の眼にも、累と同じように殺意が宿り戦闘態勢に入った。そんな彼女に累は少しも動揺する様子は見せずに、淡々とした声で言った。
「お前等、今言ったこともう一度言ってみてよ。誰の何が偽物だって?」
「ああ、何度でも言ってやる!」
「だから、耳の穴かっぽじってよく聞きなさい!」
――お前の絆は、偽物だ!!
二人の重なった言葉の刃が、累の耳と心を深く抉った。