第40章 蜘蛛の棲む山<肆>
「あたしが知っている家族は、みんな笑ってた。幸せな眼をしていた。けれど、あんたらは?笑っていない。泣いている。怖がっている。あんたたちの眼からは、幸せなんてかけらも感じない。氷みたいな冷たい感情しか読み取れない。互いを尊重しない関係を家族なんて呼ばないわ!絆の意味をはき違えた、一方的な押し付けよ!!」
汐が思わず叫ぶと、炭治郎は頷き真剣な眼差して二人を見つめた。
「汐の言う通りだ。強い絆で結ばれている者には信頼の匂いがする。だけどお前達からは、恐怖と憎しみと嫌悪の匂いしかしない!!こんなものを絆とは言わない!!」
「「紛い物、偽物だ!!」」
汐と炭治郎の言葉が綺麗に重なり、累と累の姉鬼へと突き刺さる。姉鬼は息をのみ、累は大きく目を見開いた。
「お前等・・・!」
累の眼が怒りに震え、口元がひくひくと痙攣しだす。
そんな時、不意に背後から草が揺れる音がした。
「お?ちょうどいいくらいの鬼がいるじゃねえか」
汐と炭治郎が視線を向けると、そこには一人の鬼殺隊士が笑いながら近づいてきた。
「こんなガキの鬼なら俺でも殺れるぜ」
彼はそう言って刀を累へとむけた。炭治郎が制止しようとするが、彼はそれを遮った。
「お前らは引っ込んでろ。俺は安全に出世したいんだよ。出世すりゃあ上から支給される金も多くなるからな。俺の隊は殆ど全滅状態だが、とりあえず俺はそこそこの鬼一匹倒して下山するぜ」
彼はそういうと、そのまま背後から累に斬りかかった。