第40章 蜘蛛の棲む山<肆>
伊之助の姿が見えなくなると、炭治郎は汐の姿を捜す。彼女も、先ほどの攻撃で吹き飛ばされているのを寸前に見たからだ。
目を凝らすと、少し離れた場所を飛ばされる汐の姿を見つけた。慌てて手を伸ばし、彼女の右腕を掴む。
そして二人の体は地面に向かって吸い込まれるように落ちていった
「汐、技だ!技を出して衝撃を緩和しろ!!出ないと死ぬぞ!!」
「わかった!!」
炭治郎は地面に近づく寸前に汐の手を放し、大きく息を吸い刀を強く握った。
汐も彼と同様に、刀を構えなおして大きく息を吸う。
――海の呼吸――
――肆ノ型・改 勇魚(いさな)下り!!
――水の呼吸――
――弐ノ型 水車!!
二人はほぼ同時に技を放ち、汐はそのまま背中から地面に転がり、炭治郎は勢いあまって木にぶつかったものの何とか生きていた。
「炭治郎!無事!?」
「ああ、汐も無事みたいだな。けれど、あの鬼の一撃で随分飛ばされてしまったな」
炭治郎は顔をしかめながらあたりを見回し、汐も鬼の気配を感じて警戒しながら同様に見まわす。
(伊之助、大丈夫かしら。あんな化け物一人で相手にするには危なすぎるわ)
一刻も早く彼の下へ戻らなければならない。汐は炭治郎と顔を見合わせてうなずいた、その時だった。
「ギャアアア!!!」
何処からか布を引き裂くような悲鳴が聞こえ、二人は思わず振り返る。
「いっ、痛い!痛いわ累!!」
そのあと間髪入れずに少女の痛みを訴える声が聞こえてきた。
「お願いだから、もうやめて・・・!うっ、うううっ・・・!!」
嘆願する声に交じってすすり泣くような声も聞こえてくる。考える間もなく炭治郎は、その方向へ向かって歩き出し、汐もそのあとを追った。