第39章 蜘蛛の棲む山<参>
「あ、炭治郎!無事だったのね!」
汐が伊之助を押しのけ炭治郎に駆け寄ろうとするが、そんな彼女を伊之助がさらに押しのけ彼に詰め寄った。
「倒したかよ!」
「ああ、倒した。伊之助、大丈夫か?」
「俺に対して細やかな気づかいするんじゃねえ!いいか、わかったか!お前にできることは俺にもできるんだからな!もう少ししたら俺の頭もお前みたいに硬くなるし、それからな・・・」
「はいはいわかったからとりあえずあんたは黙りなさい。そして黙って手当てを受けなさい」
汐はそういって布を取り出し、伊之助の傷に当てる。痛みに呻き、汐を振り払う伊之助。そんな彼を恐ろしい声色で黙らせる汐。
結局伊之助がさんざんごねたため、血を軽くふくくらいしか手当てはさせてもらえなかった。
「さて、これからどうする?鬼の気配はまだまだあるし、さっき見た子供の鬼も気になるわ」
汐がそういうと、炭治郎は真剣な面持ちで二人に声をかけた。それは、先ほど女の鬼が言っていた、十二鬼月がいるという話だった。
炭治郎の言葉に汐の顔が青ざめ、伊之助は首を傾げた。
「本当なのね。本当に、十二鬼月がこの山にいるのね」
「ああ、きっと本当だ。あの人からは嘘の匂いがしなかったから、間違いはないと思う」
「そう。それが事実なら十二鬼月なら、禰豆子を助ける大きな一歩になるはずね」
汐がそういうと炭治郎の眼に決意が宿る。それを見て汐の心にも決意がみなぎった。
一方十二鬼月の存在を知らなかった伊之助は、俺にも教えろと声を荒げる。そのうるささに汐は顔をしかめつつも説明した。
「とにかく、この山に十二鬼月がいることはわかった。問題はどの匂いがその鬼であるかだ」
「考えていても始まらないわ。先へ進みましょう。こんな蜘蛛だらけの気持ち悪い森、さっさと抜け出したいもの」
汐の提案に炭治郎は賛成し、伊之助を連れて森を抜けることにした。