第39章 蜘蛛の棲む山<参>
「ちっ!図体の割に素早いわね。操り人形様様って感じかしら?」
汐は吐き捨てるように言うと、伊之助に絡みついていた糸を切断した。
「汐!伊之助!大丈夫か!?」
炭治郎が心配そうな顔で駆け寄ると、汐は平気と言いたげにうなずいた。
そんな彼らを見て、伊之助の中に温かいのものが急速にこみ上げる。
「伊之助!俺たちと一緒に戦おう!一緒に考えよう!この鬼を倒すために力を合わせよう!」
「あたしたちだけじゃ厳しいわ!あんたの力も貸してちょうだい!!」
「てめえらァァ!!これ以上俺をホワホワさせんじゃねえ!!」
炭治郎と汐の言葉に、伊之助は我慢ができないと言わんばかりに声を荒げた。
鬼はキリキリという音を立てながら腕を振り上げる。その切っ先は炭治郎に向かっていた。
「邪魔だそこ!!」
伊之助の声に炭治郎は気づき、とっさに身をかがめて叫んだ。
「伊之助!俺を踏め!!」
伊之助は炭治郎に背負われている禰豆子が入った箱を踏み、鬼に躍りかかる。鬼も伊之助の頸を穿とうと、両腕を振り上げた。
だが、いつの間にか背後に回っていた汐が刀の峰で糸をからめとり、その動きを抑える。その一瞬の隙をついて、伊之助は両腕を斬り落とした。
「伊之助跳べェ!!汐はそのまま離れろ!」
炭治郎は頭で体を支えながら叫ぶと、そのままの姿勢のまま大きく息を吸った。