第39章 蜘蛛の棲む山<参>
「あいつ急所が無ェぞ!無いものは斬れねえ!!どっ、ハァ!?どうすんだどうすんだ!?」
伊之助は混乱しているのか、言葉が支離滅裂になっている。そんな彼を落ち着かせようと、炭治郎は冷静な声色で言った。
「袈裟斬りにするんだ」
炭治郎は刀を鬼の屍に向かって右斜めに構えながら言った。
「右の頸の付け根から左脇下まで斬ってみよう。広範囲だし、かなり硬いとは思うが・・・たぶん――」
だが、炭治郎が言い終わる前に伊之助が我先にと飛び出した。慌てて制止するが、その声は届かず彼は鬼に斬りかかる。
が、それより早く鬼の屍の鎌のような腕が伊之助の上半身にいくつかの切り傷を作った。
(速い!!が、避けられない程じゃねえ!!)
伊之助は鬼の攻撃を避けつつ反撃の隙を伺うが、それに気をとられていたせいで小さな蜘蛛の存在に気づくことが遅れた。
気づいたときには彼の手足は糸に繋がれ、身動きが取れなくなってしまった。
その隙を相手は見逃さず、動けなくなった伊之助に向かって腕を振るおうとしていた。
(やられる!!)
だが、その切っ先が伊之助に届く前に紺青色の光がその間を穿った。汐だ。
汐が間に入りその一撃を受け止めたのだ。
「うらあああああああ!!!」
汐が咆哮を上げ斬りかかるも、鬼は軽やかな動きで後ろに下がって距離をとった。