第39章 蜘蛛の棲む山<参>
「こっちだ!かなり近づいているぜぇ!」
月明かりだけに照らされたうっそうな森の中を、伊之助を先頭に汐と炭治郎は走り続ける。
鬼に近づいているせいか、汐も鬼の気配を感じ始め、炭治郎も風向きが変わって鼻が利くようになってきた。
(気配はあと二つ。おそらくそのどちらかが、さっきの胸糞悪い人形劇の主催者!!)
森の中に三つの足音と草木のこすれる音だけが響く。それがしばらく続いたその時。
鬼の気配が強くなると同時に、三人の視界に黒い影が映った。
「伊之助!」
「俺の方が先に気づいてたぜ!!その頸、ぶった切ってやる!!」
伊之助は高らかに叫ぶと、刀を構えなおしていち早く先陣を切った。彼の鈍色の刀が月明かりに照らされてギラリと光る。
だが、伊之助の振り下ろされた刀は鬼の腕によって弾かれた。
伊之助は空中で鮮やかに回転すると、汐と炭治郎の間にふわり降り立った。
「ちょっ、ちょっとちょっと。嘘でしょ・・・?」
目の前の相手を見て、汐の顔が青ざめる。彼女たちの前に立ちはだかった相手は、頭部がなく鎌のような腕を接がれた鬼の屍だった。
「こいつ、頸が無ェエエ!!」
伊之助が大声で叫ぶと、鬼の屍は腕を振り上げ汐達に向かって振り下ろした。三人はそれぞれ別の方向に飛び、その攻撃をよけると刀を構えなおした。