第38章 蜘蛛の棲む山<弐>
「がははは!!どうだわたあめ牛!俺様はすごいだろう!?すごいだろう!?」
「ええすごい、すごいから耳元で大声出すのはやめて。それより、炭治郎!残りはその人一人だけ!?」
「ああ!」
炭治郎の言葉に伊之助が反応し、汐を押しのけるようにして隊士の方へ向かう。
「よし。もう一回やるからお前はちゃんと見とけ!」
「ああ、わかった!それでいい!とにかく乱暴にするな!!」
炭治郎の言葉を合図に、伊之助が隊士の方へ走り出したその時だった。
伊之助が届く前に、彼の前にいた隊士の頸が鈍い嫌な音を立てて反対方向へ曲がった。
「っ!!」
全員が息をのむ中、吊り上げられていた他の隊士達の頸も、同じように逆方向へ捻じ曲げられた。
時間と音が止まったような静止した空間の中。伊之助が声を荒げ、怒りを露にした。
炭治郎は蹲る、屍となってしまった仲間のそばにそっと腰を下ろす。
その背中からにじみ出ているのは、息をのむほどの強い怒り。彼のその姿に汐と伊之助の背中に冷たいものが伝った。
「・・・行こう」
淡々とした声が炭治郎から洩れる。その冷たさに汐は戦慄き、伊之助も「そうだな」としかいうことができなかった。