第38章 蜘蛛の棲む山<弐>
「手足も、骨、骨が・・・、内臓に、刺さって、いるんだ・・・。動かされると・・・激痛で、耐えられ、ない。どのみち、もう死ぬ・・・だから」
――【助けて】くれ。止めを、刺してくれ
その言葉がどういう意味を持つのか、汐は瞬時に理解した。彼女の脳裏に思い浮かぶのは、苦しむ養父玄海と、浅草で鬼にされ苦しむ男性の姿。
汐は無意識に刀を向けようとしたその時だった。
「よしわかったァ!」
汐より先に伊之助が飛び出し、隊士達に止めを刺そうとする。それを炭治郎が必死な声で静止した。
「待ってくれ!何とか助ける方法を・・・!」
「いい加減にして!!この状況で何を甘っちょろいことを言っているの!!」
隊士の攻撃を受けながら汐が叫んだ。思わぬ彼女の大声に、炭治郎はびくりと体を震わす。
「もたもたしてたらこっちが危ないのよ!!?」
汐は炭治郎を怒鳴りつけ、隊士達を見据える。自分の人としての心はなくすかもしれないが、彼らをこのまま苦しませるくらいなら解放してあげたい。
何より、大切な人たちをここで失うわけにはいかない。
「あんたがやらないなら、あたしがやる」
汐は淡々とした声でそういうと、刀を構えた。みんなを救うのも勿論だが、炭治郎に手を汚させるくらいなら自分がその業を背負おう。
その覚悟を心に宿し、汐は切っ先を隊士に向けた。
「伊之助も汐も待ってくれ!!」
炭治郎が女性隊士の刀を受けながら叫んだ。これ以上、汐に命を奪う空しさを味わってほしくない。傷つく姿を見たくない。
「考える、考えるから!!」
炭治郎は必死で考えを巡らせた。技は使いたくない。しかし糸は斬ってもすぐにつながる。動きを止めるにはどうしたら――