第37章 蜘蛛の棲む山<壱>
その場から動けずにいる汐の背後から、別の隊士が迫る。汐は歯を食いしばると、心の中で謝りながら前の隊士の腹を思い切り蹴った。
そして一瞬生まれた隙を狙って足を払って押し倒す。
それと同時に伊之助が斬りかかってきた隊士を組み伏せた。
(!?背中から鬼の気配がする!)
汐が目を凝らすとそこには、やっと見えるくらいの糸が何本もつながっていた。汐はすぐさま刃を振るい、その糸を断ち切った。
隊士の体は解放された様に地面に吸い込まれていった。
「炭治郎、伊之助、糸よ!糸で操られてる!糸を切って!!」
「わかった!」
炭治郎は頷くと、襲い掛かってくる隊士の背中に向かって刀を振った。ぷつりという手ごたえと共に、隊士の体は地面に落ちていく。
「お前より先に俺が気づいてたね!」
伊之助は得意げに言うと、跳躍しながら二本の刀を振るい複数の隊士の糸を切り捨てた。
ひとまずの脅威は去ったが、彼らを操っている鬼がまだいるため根本的な問題は解決していない。汐は必死に鬼の気配をたどるが、気配が分散していてわからない。
「炭治郎、あんたの鼻で鬼の位置はわからないの?」
「もうやってる!けれど、すごい刺激臭がしてわからないんだ」
彼にしては珍しく声を荒げ、焦っている様子が分かる。すると突然、汐の近くでかさかさと奇妙な音が聞こえた。
音のする方向へ回を向けると、汐の右腕に二匹の白い蜘蛛が這いあがってきていた。
その瞬間、汐の右腕が自分の意思とは関係なく持ち上がった。すぐさま刀で糸を切ると、蜘蛛はそのままどこかへと逃げて行ってしまった。