第37章 蜘蛛の棲む山<壱>
そして翌朝。
「汐。そろそろ朝食だぞ。起きろ」
炭治郎が汐の使っている部屋の前で声をかけるが返事がない。彼は小さくため息をつくと「入るぞ」と言って襖を開ける。
そしてその奥の光景を見て閉口した。
部屋にはいろいろなものが散乱し、布団は乱れその中心で汐が気持ちよさそうに眠っている。
鱗滝のところに彼女が預けられて、まず炭治郎が驚いたのが汐が片付けが苦手であったということだ。
片付けが苦手な女性がこの世にいることにひどく驚いたことを覚えている。
「汐、起きろ!朝だぞ!」
炭治郎が声をかけると、汐は小さくうめきながら目を開ける。そんな彼女に炭治郎は呆れたような顔をして周りを見回した。
「お前なんだよこれ。俺いつも言ってるよな?使ったらきちんと片付けろって」
「うるさいわね~、朝っぱらから説教なんかしないでよ。後からやろうと思ってただけ」
「そのあとからっていうのが駄目なんだ。後回しにすると絶対に忘れるだろ?朝食の前に軽く片づけをしてからにしろ」
「わかってるわよ~。まったく、いくら自分が掃除好きだからってあたしにまで押し付けなくても・・・」
ぶつぶつと文句をたれながら、汐は寝ぐせのついた頭のまま片づけを始める。そんな二人を見て善入は全身を震わせると・・・
「親子か!!!」と、全身全霊で叫んだのだった。