第36章 幕間その参
知らない気持ち
「炭治郎。禰豆子のお風呂、今日はあたしが当番だったわね。ちょうど沸いたみたいだから連れて行ってもいい?」
「ああ、頼むよ。禰豆子は汐と一緒に入るの楽しみにしているみたいだから」
炭治郎の言葉に、禰豆子は嬉しそうに目を細める。そして「汐の言うことをきちんと聞くんだぞ」と告げると、禰豆子は頷き汐の手を引いて風呂場へ向かった。
そんな二人の背中を嬉しそうに見ていた炭治郎だったが、ふと部屋を見渡してみると善逸の姿がない。
ついさっきまでここにいたのは確かで、その証拠に善逸の匂いがまだ残っている。それを認識した瞬間、炭治郎の頭にある考えが浮かんだ。
(まさか・・・!)
炭治郎は駆け出した。このままではみんなが危ない。彼は祈るような思いで風呂場へ足を速める。が、炭治郎の願いもむなしく脱衣所から凄まじい悲鳴が聞こえた。
炭治郎が急いで脱衣所の扉を開けると、そこには簀巻きにされて天井からつるされている善逸と、その前で恐ろしい形相で彼を睨む汐の姿があった。
その光景を見て炭治郎は思わず頭を抱えた。
「あ、炭治郎ちょうどよかったわ。このぼんくらの処理をお願いね」
汐は抑揚のない声でそう告げると、簀巻き状態の善逸を炭治郎に押し付け脱衣所から追い出した。
やがて意識が戻った善逸は、その後部屋でたっぷりと炭治郎に説教をされるのであった。