第36章 幕間その参
「その顔を見るといるみたいね。あんたにとって何よりも大切な人。だったらその人のことを決して忘れては駄目。そして間違っちゃ駄目よ」
あたしみたいに、という言葉は消え入りそうだったが、善逸の耳にははっきりと聞こえた。
「なんて、ね。あたしだってたいそうなことを言えるような人間じゃないし、ちょっとした独り言だって思ってちょうだい」
「それは無理だよ。独り言にしちゃ長すぎる」
「言うじゃない」
そんなやり取りをしていると、善逸が突然汐の顔をまじまじと見つめた。そしてそっと彼女の手を握る。
「汐ちゃん、ありがとう。俺、頑張ってみる。君のことを信じるよ」
「善逸・・・」
「だから・・・。禰豆子ちゃんのことを炭治郎に口利きしてくれないか?」
「今までの空気を返せドサンピン」
汐の刀のような辛辣な言葉に、善逸の自信は急速にしぼんでいくのであった。