第36章 幕間その参
「初めてあんたの眼を見たときに思ったけれど、あたしはあんたが弱虫には見えなかった。あ、あたしはね。眼を見ればその人の大体の人柄や感情がわかるの。人と鬼の区別もできるくらいね。だから、あんたが弱いとは思わなかったのよ」
だから、と汐はつづける。
「きっとあんたに圧倒的に足りないのは【自信】ね。自分はできる、大丈夫だって思う自信。炭治郎は腐るほど持ってるけど、全員があいつみたいな前向きお化けじゃないからね」
そう言って汐は悪戯っぽく笑った。その笑顔に、善逸の胸が小さく音を立てる。
「まあ自信なんてもらえるもんじゃないし、どうすればつくなんてあたしにもわからない。こういうのってきっときっかけなのよ。あたしが禰豆子を受け入れたように、ね。・・・・あ、そうだ!」
汐は突然立ち上がり「いいことを思いついた!」と叫んだ。ころころ変わる彼女の音に、善逸は困惑した表情を浮かべた。
「あんた、自分が信じられないならあたしたちを信じればいいんじゃない?伊之助はどうかわかんないけど、少なくともあたしと炭治郎は善逸が強くて優しいことを知ってる。見る限り、あんた人を信じるのは得意そうだしね」
「え・・・?」
「そうだそれがいい!もしも怖くなって自分に自信がなくなったら、自分を信じている人を思い出せばいいのよ。善逸にはいないの?自分を少しでも信じてくれた人」
汐の言葉に、善逸の脳裏にある人物が浮かんだ。不甲斐なく、どうしようもない自分を決して見限ったりしなかった人。自分を信じてくれていた人。その人の期待にこたえたいと、心の底から思ったこと。