第36章 幕間その参
「こちらの部屋をお使いくださいませ」
老女はそう言って汐達に部屋を案内する。炭治郎、善逸、伊之助は同じ部屋をあてがわれ汐はその隣の部屋をあてがわれた。
汚れた隊服はすぐさま老女が回収し、彼らは用意された浴衣に着替えた(伊之助はかなりごねたが、炭治郎の必死の説得により何とか受け入れた)
着替えを終えた後、伊之助は汐だけが別室に通されたことに疑問を抱いた。
「なんであいつだけ部屋が別なんだ?」
伊之助の問いかけに、炭治郎と善逸は怪訝そうな顔で彼を見た。まさに、「お前は何を言っているんだ」と言いたげな顔で。
「なんでって、そんなの当り前だろう?俺たち四人一緒だと布団が敷けないじゃないか」
炭治郎がさも当たり前に答えると、善逸はおかしなものを見るような眼で炭治郎を見た。
「いや違うだろ!常識で考えて違うだろ!お前今まで汐ちゃんと一緒にいて何も感じなかったのか?嫁入り前の女の子がむさ苦しい野郎共に囲まれるなんて、うらやま・・・非常識にもほどがある!」
若干邪な本音を漏らしながらも、善逸は必死に男女の相部屋は非常識だと熱弁する。すると、
「ねえ、あたし、汐だけど。入ってもいい?」
襖の奥から汐の声がした。炭治郎がいいと答えると、襖がすっと空き浴衣に着替えた汐が入ってきた。
「あ、やっぱり部屋の構図は一緒なのね、って当たり前か」
汐ははにかんで笑いながらぐるりと部屋を見回す。隊服とは違う彼女の服装に、善逸は目を丸くする。
「おお・・・!隊服姿の汐ちゃんもかっこよくて素敵だけど、浴衣姿だとなんか、こうグッとくるものがあるよな」
善逸が中年の親父のようなことを口にすると、炭治郎はきょとんとした顔で彼を見つめた。
「グッとくるものってなんだ?なんで善逸はそんな気持ち悪い笑い方をしているんだ?」
「真面目に返されても困るんですけど・・・」
善逸は全く予想外の答えが返ってきた炭治郎にめまいを覚え、炭治郎はなんで善逸がそんな顔をするのか本当に理解できていないようだった。
だが、伊之助はじっと汐を見据えたまま動かない。どうしたのか問いかけようとしたとき、突然伊之助が嘲るように言った。