第34章 歪な音色(後編)<参>
その後、伊之助のお陰で犠牲者の埋葬は恙なく完了した。手を合わせて冥福を祈る皆をよそに、伊之助はひたすら森の木々に向かって突進していた。
しばらくすると、どこから現れたのか炭治郎の鴉と、汐の鴉が並んで飛んできた。そして汐達に山を下りるように告げる。
人語を話す鴉を初めて見た正一は驚いていたが、清とてる子はもうこれ以上何も考えないようにした。
それから山を下りる際、未だに正一が鬼を倒したと勘違いしていた善逸が彼と離れることを非常にごねた。
汐と炭治郎が二人がかりで引きはがすも、善逸は泣きべそをかきながら未練がましい言葉を吐いている。汐の殺意に近い怒りががふつふつと漏れ出していることに気づいた炭治郎が、すぐさま善逸に当て身を入れて気絶させた。
そして炭治郎の鴉が清に藤の花の袋を吐き出した。これは昔、汐が昔玄海からもらった袋とよく似たものであった。最も、鴉の胃液と思われる謎の液体に塗れていたため、とてもじゃないが触れるものではなかったが。
「皆さん、本当にありがとうございました。家までは自分たちで帰れます」
正一とてる子に支えられた清が、深々と頭を下げていった。そんな彼らに炭治郎は手を振り、気を付けるように言う。
「汐お姉ちゃん、素敵なお歌を聞かせてくれてありがとう!!さようなら!!」
てる子が空いている方の手を大きく何度も横に振るう。そんな彼女に汐はにっこりとほほ笑んで見せた。