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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第34章 歪な音色(後編)<参>


「あ、あいつ・・・!生きてたのね」

猪男の姿を見て汐は驚いた顔をする。炭治郎が来る前にひと悶着あり、故意ではないとはいえおかしなところを蹴り飛ばしてしまったため、汐は少し心配していた。
しかし、目の前の光景が目に入ると、その心配は木っ端みじんに吹き飛んだ。

「刀を抜いて戦え!この弱味噌が!!」
猪男は刀を善逸に向けたまま大声でまくし立てる。だが、傷ついた善逸は何かを抱えたまま微動だにしない。
よく見ると、彼が抱えているのは禰豆子が入っている箱だった。

「炭治郎・・・、俺、守ったよ・・・」
善逸の口から弱ってかすれた声が漏れる。上げたその顔は腫れあがり、目には青あざまでできている。

「お前がこれ・・・命より大事なものだって・・・言ってたから・・・」

善逸が紡いだその言葉は、屋敷内で炭治郎が言っていた言葉だった。彼は覚えていたのだ。その言葉を。

「刀も抜かねえこの愚図が!同じ鬼殺隊なら戦って見せろ!」

猪男はそう叫んで善逸を何度も何度も蹴りつける。その度に善逸は苦しげに呻き、真紅の雫が飛び散る。だが、それでも善逸は箱を決して放そうとはしなかった。

「もういい。お前毎箱を串刺しにしてやる!!」

猪男は刀を逆手に持つと、その切っ先を善逸の背中に向ける。そして今にも突き刺そうとした、その瞬間。

「止めろ!!!」

炭治郎が瞬時に飛び出し、右拳を猪男の鳩尾に叩き込んだ。凄まじい打撃音がして彼の体は後方に吹き飛ぶ。
善逸の耳にはその瞬間、猪男の骨が折れる音が聞こえた。

(骨、折ったァ!)

流石の善逸も、これには驚きあきれる。そんな彼の元に汐は駆け付け、傷の具合を見た。

鼻からは血がとめどなく溢れ、口も切れている。汐は直ぐに水で布を濡らすと応急処置を開始する。
「汐ちゃん、君も無事だったんだ。よかった」
「人の事より自分の心配をしなさい。まったくどいつもこいつも、どれだけ周りを心配させれば気が済むのよ」

善逸の言葉を一掃し、汐は淡々と手当てを進める。時々善逸が痛みで声を上げるが、それを完全に無視しながら彼女は手当てを続けた。
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