第33章 歪な音色(後編)<弐>
「――!――お!しっかりしろ、汐!!」
耳元で声を上げられ激しく揺さぶられ、汐ははっと目を覚ました。目の前には自分を心配そうに見つめている炭治郎の顔があった。
「よかった。気が付いたんだな」
炭治郎の不安げな眼が安心したものに変わる。周りを見回すと、清とてる子も心配そうに汐を見ていた。
「あ、あれ?炭治郎?どうしてここに?」
「どうしてって、鬼を倒した後迎えに来るって言っただろ?驚いたよ。部屋に入った瞬間、お前が動かなくなったって清たちが泣きながら言うものだから」
炭治郎はそう言って心の底から安心したように言った。
どうやらあの後、汐は少しの間気を失っていたようだった。その間、夢を見たような気がするが思い出せない。
「あんたこそ無事だったのね、よかった。あんたの言いつけ通り、二人は無事に守りきったわよ」
汐の声は疲れているせいか、いつもより声に覇気がない。そんな彼女の右腕に、炭治郎の視線が向けられる。すると彼の顔色が瞬時に変わり声を荒げた。
「汐、右腕から血が出てる!肩の傷が開いたんじゃないか!すぐに見せて!!」
そう叫んで炭治郎は汐の服に手をかける。それに気づいた汐は我に返ると、顔が瞬時に真っ赤になり、
「ぎゃあああああ!!!!」
ものすごい悲鳴を上げ、炭治郎の顔面に渾身の力を込めた平手打ちを叩き込んだ。小さくうめき声をあげて吹き飛ぶ炭治郎に、清とてる子は目を点にした。
「いきなり何すんのよこの馬鹿!!子供が見ている前で何晒してんのよ馬鹿!!!」
「何って・・・けがの手当てをしようとしてただけじゃないか」
「それぐらい自分でできるわよ!!いいからさっさと薬をよこしなさい!!」
汐は炭治郎から薬をひったくると、すぐさま隣の部屋に転がり込んだ。いきなり豹変した汐に、炭治郎は頬に手形を残したまま呆然と立ち尽くしていた。