第31章 歪な音色(前編)<肆>
「あ、あんた、どっから湧いて出たのよ」
「失礼ナ小娘!私ヲ虫扱イスルナ。ガキドモハツツキマワスゾ!!」
「よさないか」
汐と子供たちに絡みだす彼を炭治郎は静かに諫める。そして珍しき血とは何かと尋ねると、松右衛門は得意げに胸部の羽を震わせながら答えた。
「生キ物ノ血ニハ種類系統ガアルノダ馬鹿メ。稀血ノ中デモ、サラニ数少ナイモノ、珍シキ血デアレバアル程鬼ニはソノ稀血一人デ五十人、百人人をヲ喰ッタト同ジクライノ栄養ガアル!!稀血ハ鬼ノ大好物ダ!御馳走ダ!!」
彼の説明に清とてる子は抱き合って震え上がる。汐と炭治郎は顔を見合わせると、小さくうなずいた。
「炭治郎。そいつの話が確かなら、清をさらった奴はまた必ず狙ってくるわね」
「ああ。だが、この家にはまだ複数の鬼の匂いがする。もしも清が稀血であることを悟られたら、清だけじゃなくてる子も危ない」
炭治郎と汐がそう言ったとたん。
汐と炭治郎は、同時に感じた。強力な鬼の気配を――。