第30章 歪な音色(前編)<参>
善逸はそのまま体を沈め、刀に手をかける。口からは雨のような煙のような音が漏れ、空気を震わせる。
気配が一変した彼の姿に、鬼の顔が青ざめた。
――雷の呼吸
壱ノ型・霹靂一閃!!
その刹那。善逸の姿が消えたかと思うと、金色の閃光が鬼を穿つ。そしてそのあとを追うように、雷のような音が響き渡った。
鬼の頸が宙に舞うときには、すでに彼は刀を納めていた。
その瞬間は、援護に入ろうとした汐も見ていた。
閃光と共に発せられた衝撃波に顔を覆う汐。それが収まり恐る恐る目を開けたそこには、刀を納めた善逸の横顔があった。
その顔は紛うことなき、鬼狩りの顔であった。
「ぜ、善逸・・・?」
今までとは全く違う彼の姿に、汐は思わず目を奪われる。だが、突然善逸は体を震わせ「んがっ」とおかしな声を上げた。
そして後ろを振り返ると、足元に何かが転がってくる。それが鬼の頸だと認識したとたん。
「ギャアーーーッ!死んでるぅ!」
そのまま飛び上がり、再び涙目になりながら叫びだした。